オーストラリアおける会社登記

オーストラリアの会社と取引をする際に、まず確認すべきなのは、相手方の会社がどのような会社であるのかということです。

 

オーストラリアの会社について、いつ設立されたのか、登記住所はどこなのか、資本金の金額はいくらか、発行済株式数は何株か、取締役は誰か、株主は誰なのか、といった基本情報は、ASIC(オーストラリア証券投資委員会)に登録されており、ASICのウェブサイトで入手が可能です。ASICの登記情報は、所定の金額(数ドル~数十ドルです)を支払えば、誰でもオンラインで入手することができます。  

 

これは日本の会社登記情報に相当するものであり、公的な機関に記録された正式な記録となります。日本の会社登記情報と大きく異なる点は、ASICの登記情報では、株主が誰かという情報が入手でき、誰が会社を所有・支配しているのかが分かるという点です。

 

このため、株式の売買取引の際には、当該株式を発行している会社のASICの登記情報報を取得すれば、当該株式の売主が本当に当該会社の株主(当該株式の所有者)であるかを簡便に確認することができます。

 

* オーストラリアの会社の形態には、主として、「公開会社」(public company – 会社名の最後がltdとなっている会社)と「非公開会社」(proprietary company – 会社名の最後がpty ltdとなっている会社)の2つの種類があり、後者は株主がASICの登記情報に記載されますが、前者については記載されません。但し、オーストラリアのほとんどの非上場会社は「非公開会社」であり、ASICの登記情報で株主の情報を取得できます。オーストラリアの上場会社は「公開会社」の形態でなければならず、ASICの登記情報に株主の情報は記載されませんが、上場規則によって要求される開示情報において株主の情報が記載されます。

 

201983日追記】

非公開会社は、大規模非公開会社(Large Proprietary Company)と小規模非公開会社(Small Proprietary Company)の2種類があります(会社法45A条)。

大規模非公開会社は、以下の要件のうち2つ以上を満たす非公開会社をいいます。

・ 当該会社とその支配する会社の連結収入が25百万豪ドル以上であること

・ 当該会社とその支配する会社の連結総資産が12.5百万豪ドル以上であること

・ 当該会社とその支配する会社の従業員が50名以上であること

小規模非公開会社は、以下の要件のうち2つ以上を満たす非公開会社をいいます。

・ 当該会社とその支配する会社の連結収入が25百万豪ドル未満であること

・ 当該会社とその支配する会社の連結総資産が12.5百万豪ドル未満であること

・ 当該会社とその支配する会社の従業員が50名未満であること

上記の大規模非公開会社・小規模非公開会社の要件は、201971日に以下のように変更されています。

・ 連結収入:「25百万豪ドル」⇒「50百万豪ドル」へ変更

・ 連結総資産:「12.5百万豪ドル」⇒「25百万豪ドル」へ変更

・ 従業員;「50名」⇒「100名」

詳細については、ASICのウェブサイトを参照。

 

また、もう一つ日本の会社登記情報と異なる点として、ASICの登記情報には会社の事業目的が記載されていません。オーストラリアでは、会社の事業目的は定款に規定する必要が無く、登記事項にもなっていません。オーストラリアの会社は、事業目的に事業活動が縛られる日本の会社と異なり、合法的な事業であれば如何なる事業でも行えることになっています。日本と同じ感覚でASICの登記情報を取得してオーストラリアの会社の事業目的を調べようと思っても、オーストラリアの会社はそもそも事業目的を定めていませんので、調べることはできません。

 

なお、会社の登記情報のみならず、会社がASICに対して届出を行った書類についても同様に誰でもオンラインで入手することができます。会社がASCIに届出をする書類には、会社の取締役の変更届出書、新株発行の届出書といったものの他に、会社の年次財務報告書(但し、財務報告義務を負わない小規模非公開会社を除く)や会社の再生計画書(Deed of Company Arrangement)(会社が再生手続を行った場合)といったものも含まれます。