オーストラリア法における契約の解除

オーストラリアの国内取引に関する契約、又は国際的な取引であってもオーストラリアの会社との間で締結した契約等においては、契約の準拠法(Governing law)がオーストラリアの法律となっていることがあります。この場合、契約の規定は準拠法であるオーストラリアの法律に従って解釈・適用されることになります。

 

今回は、オーストラリアの法律が準拠法となっている契約を解除したいと思った場合、どのような事由があれば解除ができるのかについて説明します。

 

まず、契約に解除に関する規定があり、解除権を行使できる事由が規定されている場合、契約当事者は、基本的には当該解除規定に従って契約を解除することができます。

 

契約に解除に関する規定がない場合、契約当事者は、契約法の原則(に従って契約を解除することができます。契約法の原則として、(1)相手方当事者が契約の根幹となる規定(essential term)に違反した場合、(2)相手方当事者が契約の根幹とならない規定について重大な違反をした場合、又は(3)相手方当事者が契約の存在や拘束力を否定する行為(repudiation of contract)を行った場合には、契約当事者は相手方当事者に解除通知を出すことによって契約を解除することができます。

 

相手方当事者の違反があった規定が契約の根幹となる規定なのか、それとも根幹とならない規定なのかについて、判断が難しい場合があるかもしれません。よくある例としては、売買契約又はサービス提供契約において、相手方当事者が売買代金又はサービス代金の支払を怠った場合、通常は契約の根幹となる規定の違反といえるため、契約当事者は相手方当事者に対して契約解除を行うことができます(上記(1)の例)。

 

上記(2)の例としては、共同で土地開発を行うジョイント・ベンチャー契約において、ジョイント・ベンチャー事業を管理する相手方当事者が何年にも渡りジョイント・ベンチャー事業の会計帳簿及び財務記録を作成してこなかったことが、契約の根幹とならない規定について重大な違反があった場合とされ、契約当事者による解除が認められたという判例があります。

 

 オーストラリアにおいて契約法は判例法(コモン・ロー:裁判所の判例の蓄積によって成り立っている法律体系)によって規律されており、判例法はオーストラリアの全ての州に適用されるものであるため、契約の準拠法がオーストラリアのどの州の法律であっても本稿の契約解除に関する説明が当てはまることになります