資源・エネルギー法(先住民の権利 – Native Title)

前回からの続きです。今回は土地の探査・採掘を行なおうとする際に対処しなければならない先住民の権利(Native Title)について説明します。

3. 先住民の権利(Native Title

オーストラリアの先住民であるアボリジニーは、オーストラリアの土地に対して一定の権利(Native Title)を有していることが1992年の最高裁判所(High Court)のマボ判決(Mabo and Others v Queensland (No.2 (1992) 175 CLR 1)で認められ、これに応じてオーストラリア政府はNative Titleに関する立法(Native Titles Act  1993 (Cth))を行っています。

同法において、アボリジニーの人々は、彼らの伝統的な法律・慣習に基づいて関係性を有している土地に対してNative Titleを有するものとされています。このNative Titleの具体的な内容は、個々のアボリジニーのグループの法律・慣習の内容によって異なります(例えば、その土地の上で狩猟・採取を行う権利、儀式のためにその土地にアクセスする権利等)。

Native Titleを有していると考えるアボリジニーの人々は、連邦裁判所に対してNative Titleの存否・内容についての確認申請を行うことができます。連邦裁判所は確認申請をNational Native Title Tribunal (NNTT)Native Titleに関する専門審理・登記機関)に移送し、NNTTは一定の要件を満たしていると判断した場合、確認申請をRegister of Native Title Claimsに登記します。確認申請が登記された後、連邦裁判所は審理を行い、Native Titleの存否・内容について決定を行ないます。Native Titleの存在が認められた場合、そのNative Titleの存在・内容はNational Native Title Registerに登記されることになります。これらのRegister of Native Title Claims及びNational Native Title Registerはオンラインで誰でもアクセスすることができ、これらのRegisterを調査することによって、土地に対してNative Titleの確認申請がなされているか否か、及びNative Titleの存在が認められているか否かについて確認することができます。

土地についてNative Titleの確認申請がなされている場合、又はNative Titleの存在が認められている場合、Native Titleを侵害することになる探査・採掘の許可の申請を行おうとする者は、原則として、Native Titleの登記された確認申請者又はNative Titleの登記された保有者であるアボリジニーの人々と交渉を行う必要があります。交渉の結果、合意がまとまれば、当該合意の内容に従った探査・採掘の許可を得ることができます。この合意の内容としては、アボリジニーの人々に対する金銭的な補償が一般的ですが、この他にも開発される鉱山において一定数のアボリジニーの人々を職業訓練して雇用することを義務付けるといったものもあります。合意がまとまらない場合には、当事者はNNTTに対して、探査・採掘の許可が与えられるべきか否か、与えられる場合にはどのような条件が付されるべきかについて決定を求めることができます。

なお、アボリジニーの人々と土地の利用・管理について締結した契約のうち一定の要件を満たすものについては、Indigenous Land Use Agreementとして、Register of Indigenous Land Use Agreementsに登録することができます。このRegisterはオンラインで誰でもアクセスすることができます。