オーストラリアにおける外国会社の事業活動に関する規制

オーストラリア法においても、日本法と同様、外国の会社が、現地の法律(オーストラリア法)に基づく会社を設立せずに、外国会社として事業活動を行うことは可能です。

日本の会社法においては、外国会社(日本以外で設立された会社)が日本において継続して取引行為を行おうとする場合には、日本における代表者を定め、外国会社の登記をしなければならないとされています(日本の会社法第817条第1項、第933条)。また、当該登記をした外国会社であって日本の株式会社に類似するものについては、日本においてその貸借対照表を公告することが求められます(第819条)。

オーストラリアにおいてもこれとほぼ同様の規制があります。オーストラリアにおいて事業活動を行おう(carry on business in Australia)とする外国会社は、オーストラリアに居住する者を現地代理人として選任し、外国会社の登記を行い、毎年財務情報をASIC(オーストラリア証券投資委員会)に提出する必要があります(オーストラリア会社法第601CD条、第601CF条、第601CK条)。

外国会社がオーストラリアにおいて事業活動を行っている否かの判断は事実問題であり、外国会社の置かれた状況やその活動といった要素を考慮した上で判断されます。オーストラリアの判例法上、「事業活動を行う(carry on a business)」とは、「利益を得る目的で、継続的かつ組織的に(単独の取引ではなく)活動を行うこと(conducting activities on a continuous and systematic basis with a
view to profit
)」をいうとされています。また、オーストラリア会社法21条は、「外国会社がオーストラリアに事業拠点(place of business)を有している場合」や「外国会社がオーストラリアに所在する財産について運営、管理又は取引を行っている場合」には、「事業活動を行う」場合に該当すると定めています。

このため、外国会社がオーストラリアに拠点を設けていなかったとしても、たとえば、出張や電話・Eメール等でオーストラリア国内の顧客と連絡をとり、繰り返し、かつ定期的に(例えば、年に数回程度以上)当該顧客と取引を行う予定であり、かつその取引の目的が、当該取引を通じて利益を得ることである場合には、当該外国会社はオーストラリアで事業活動を行っていると判断される(したがって、ASICにおける外国会社としての登記等が必要になる)と考えられます。

オーストラリアにおいて事業活動を行なっていると判断される外国会社は非常に多いと思われるにもかかわらず、実際にASICにおいて外国会社としての登記を行っているケースは多くないように思います(この点は、日本の会社法における外国会社に関する規制についても同じだと思います)。但し、実際に遵守されているかどうかは別として、法津上の規制は上記のようになっており、また、過去の裁判例を見ても、裁判所は「オーストラリアにおいて事業を行うこと(carry on
business in Australia
)」に該当するか否かの判断において、広めに解釈する傾向があり、該当すると判断するケースが多いといえるため、注意が必要です。

また、「オーストラリアにおいて事業活動を行うこと」に該当するか否かという基準は、上記の会社法上の外国会社としての登録に関する規制のみならず、オーストラリア金融業許可(Australian
Financial Services Licence
)に関する規制(日本の金融商品取引業に関する規制に相当)、不正競争防止(競争・消費者法)に関する規制、個人情報保護に関する規制等のその他の様々な規制が外国会社に適用されるか否かの基準にもなっています。したがって、外国会社が「オーストラリアにおいて事業活動を行うこと」に該当すると判断された場合、ASICの登録のみならず、その他の様々な規制も適用されることになる可能性があるため、注意が必要です。