オーストラリアの金融サービス業に関する規制

1. AFSL規制の内容

オーストラリアにおいて「金融サービス業」(Financial Services Business)を行うためには「オーストラリア金融サービス業ライセンス」(Australian
Financial Services Licence)(AFSL)が必要になります(Corporations
Act911A(1))。

「金融サービス業」とは、金融サービスを提供する事業をいい(761A条)、以下の行為が金融サービスとされています(第766A条)。

(1) 金融商品に関する助言を提供すること

(2) 金融商品を取り扱う(deal in)こと

(3) 金融商品のマーケットをつくること

(4) 登録スキームを運営すること

(5) 保管・預託サービスを提供すること

(6) 伝統的な信託会社サービスを提供すること

なお、「金融商品」(financial products)とは、有価証券(securities)(定義については前回のブログ記事を参照)、登録されたスキームの持分、一定の非登録スキームの持分、デリバティブ、一定の保険等をいいます(764A(1))。

上記(1)について、金融商品に関する助言とは、「ある者が金融商品を取得するか否かの決定に影響を与えることを意図してなされた、又はそのような意図があると合理的に考えられるような情報の提供」をいいます(766B(1))。純粋な事実情報のみの提供(たとえば財務諸表の提供)であれば助言に該当しませんが、事実情報の提供であっても黙示的に金融商品の取得、保有、処分等を促すような形で提供された場合には助言に該当します。

上記(2)について、以下の行為を本人として、又は代理人として行うことは金融商品を取り扱っている(deal
in)とみなされます(766C(1))。

・ 金融商品の申込又は取得

・ 金融商品の発行

・ 有価証券の引受

・ 発行済の金融商品の変更

・ 金融商品の処分

上記の金融商品サービス業に該当する行為を他者が行うようにアレンジすること(上記の行為のために交渉を行ったり、上記の行為を実行するために尽力することを含む)も金融商品を取り扱っているものとされます(766C(2))。

金融商品の取扱いを自分自身のために行っている場合は、自らが当該金融商品の発行者である場合を除き、金融商品の取扱いとみなされません(766C(3))。例えば、ある会社Aが、自らの資産ポートフォリオの運用の一環として、あるファンドBが発行する有価証券を取得する場合、又は当該会社Aが当該有価証券を第三者に処分する場合がこれに該当します。

金融サービスを提供する者は、上記の提供するサービスの種類をカバーしているAFSLを取得している必要があります。AFSLを有しているか否かは、ASICのウェブサイトで無料で検索することができます。オーストラリアにおいて金融サービスの提供を受ける場合には、提供者が当該金融サービスをカバーするAFSLを有しているかを上記のウェブサイトで確認することをお薦めします。AFSL取得者にはライセンス番号が割り振られますが、そのライセンス番号又はAFSL取得者の名前を用いて上記のウェブサイトで検索ができます。

2. 代表者による行為

ある者がAFSL保有者の代表者(representative)として、当該AFSL保有者の保有するAFSLがカバーする範囲で上記の金融サービス業に従事する場合、当該代表者は自身でAFSLを保有する必要はありません。AFSL保有者の代表者についてもASICに登録がなされ、固有の番号が割り振られることになり、ASICのウェブサイトで無料で検索し、確認することができます。AFSL保有者の代表者に金融サービス業に関する取引を行う際には、当該代表者がどのAFSL保有者の代表者として行動しているのかを確認し、当該代表者との契約書には当該代表者が本人の資格ではなく、代表者の資格で行動をすることを明記する必要があります。

3. 海外からの勧誘行為

海外の業者であっても、オーストラリアにおいて金融サービス業に従事している場合(carry on a financial services business in Australia)には、AFSLが必要になります(911A条)。この判断基準には、ASICにおける外国会社の登録が必要になる場合である「carry
on business in Australia」と同じ判断基準が使用されており、「利益を得る目的で、継続的かつ組織的に(単独の取引ではなく)活動を行うこと」が該当するとされています。詳細については、以前のブログ記事を参照ください。

海外の業者が、オーストラリア国内の者に対して、自己の金融サービスを利用するように働きかける意図をもって行った行為、又はそのような効果を有する可能性のある行為を行った場合には、オーストラリアにおいて金融サービス業に従事したものとみなされます(911D条)。このため、海外の業者がインターネットや電話によってオーストラリア国内の者に対して自己の金融サービスの利用を働きかける行為を行う場合は、AFSLが必要になると考えられます。

例えば、日本の資産運用業者がオーストラリア国内の投資家に対して、日本で運用されているファンドに投資するように勧誘する行為は、当該行為がメールや電話によってのみ行われたとしても、AFSLが必要になると考えられます。ただし、海外の業者には、様々な免除規定(例えば、ASIC Class Order 03/824)が用意されており、これらの免除規定の要件を満たせば、AFSLは必要になりません。海外の業者のAFSLの要否の詳細を検討するためには、これらの免除規定も含めて確認をする必要があります。