オーストラリア法における共有

オーストラリアの財産法には、主として2種類の共有(concurrent ownership)が存在します。1つはJoint Tenancyであり、もう1つはTenancy in Commonです。

Joint Tenancyの共有の場合、共有者全員で共有財産を所有しており、各共有者の持分というものは観念されません。持分というものが観念されないため、共有者はJoint Tenancyの共有状態のままで共有物に対する権利を第三者に譲渡することはできません(譲渡をする場合には、共有形態をTenancy in Commonに変更した上で持分を譲渡する必要があります)。Joint Tenancyは、日本法でいう「総有」の概念に近いものといえます。なお、Joint Tenancyの大きな特徴として、Right of Survivorshipというものがあります。これは、共有者の1人が死亡した場合、当該共有者の共有物に対する権利は消滅し、相続人に承継されることはないというルールです。たとえば、2人の共有者のうち1名が死亡した場合、死亡した共有者の共有物に対する権利は消滅し、残った共有者は共有物について単独の所有権を取得できることになります(共有物は相続財産には含まれません)。

他方、Tenancy in Commonの共有の場合、各共有者の持分が観念されます。したがって、たとえば、共有者A30%の持分、共有者B20%の持分、共有者C50%の持分をそれぞれ共有物に対して有しているといったことが可能になります。また、共有者は自己の共有持分を他の共有者の同意を得ずに自由に第三者に譲渡することができます。また、Right of Survivorshipは適用されず、共有者が死亡した場合、当該共有者の持分は相続財産に含まれて、相続人に承継されることになります。Tenancy in Commonは日本法における狭義の「共有」の概念に近いものといえます。

共有の形態をJoint Tenancyにするか、又はTenancy in Commonにするかについては、共有者の意思で自由に決定することができます。親族でもないビジネス上の関係にある者の間で共有を行う場合には、一般にTenancy in Commonの方が適切であるといえますが、その場合でもきちんと契約書の中で共有の形態がTenancy in Commonであることを明確にしておく必要があります。