不動産に関する瑕疵担保責任

今回は、豪州において販売された不動産に瑕疵(土地の土壌汚染、建物の構造上の欠陥等)があった場合に、当該不動産を販売した売主(ディベロッパー等)又は当該不動産を建築した建設会社は買主に対してどのような責任を負うことになるのかについて説明します。

1.不動産の売買における瑕疵担保責任

売買された不動産に瑕疵があった場合に売主が買主に対してどのような責任を負うことになるかは、原則として、売買契約の規定に従うことになります。但し、豪州で使用されている業界の標準的な売買契約では、売主の瑕疵担保責任はほとんど定められておらず、標準的な売買契約(州毎に異なる)を使用した場合には、売買契約に基づく瑕疵担保責任はあまりあてにはなりません。このように豪州の不動産の売買では、不動産の瑕疵の有無については基本的に買主側で責任を持つのが原則であり、この原則はcaveat
emptor
let the buyer beware)と呼ばれます)。

ただし、売買契約に瑕疵担保責任の規定がなくても、売主が不動産の瑕疵について虚偽の、又は誤解を招く表示行為を行ったり、意図的に瑕疵に関する情報を隠して買主に売買契約を締結させる等、積極的に詐欺的な行為を行なった場合には、買主は売主に対して損賠賠償請求等を行うことができます。

2.新築居住用建物に関する瑕疵担保責任

新築居住用建物については法令上の瑕疵担保責任が存在します。全ての州の法律を網羅的に確認することは困難であるため、以下では主要な東部3州(NSW州、VIC州及びQLD州)についてのみ説明します。

(1)建設会社の瑕疵担保責任

居住用建物が新築された場合、建設会社は当該建物が適切に建設されており、居住用に適していることを担保する責任を法令上負っています。当該建物の所有者(建設会社に対して直接に建設を依頼した者であるか、当該者から当該建物を購入した者であるかを問わない)は、当該建物に瑕疵があった場合、この法令上の瑕疵担保責任に基づいて、建設会社に対して損害賠償等を請求することができます。瑕疵担保責任の期間は、構造上の瑕疵については建設完了から6年(NSW州・QLD州)又は10年(VIC州)、その他の瑕疵については建設完了から1年(QLD州)又は2年(NSW州・VIC州)となっています(Home Building Act 1989 (NSW)、Domestic Building Contracts Act (VIC)、Queensland Building and Construction Commission Act 1995 (QLD))。

(2)法令上の保険制度

建設会社は、建物の所有者を保護するために、瑕疵担保責任に関する保険に加入する義務が法令上あります。この保険により、建物に瑕疵があったものの建設会社が当該瑕疵に関する瑕疵担保責任を履行できない場合、建物の所有者はこの保険からの補償金の支払いを受けることができます。

3.日本法との比較

以上を日本法との比較でまとめますと、豪州法では、日本の民法第570条に定めるような不動産の売買契約一般に適用される瑕疵担保責任の制度は存在しませんが、新築居住用建物に関しては日本の品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)第94条及び第95条に定める長期(構造耐力上主要な部分等に関して10年)の瑕疵担保責任や日本の住宅瑕疵担保履行法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)に定める保険制度と同じような制度が存在しているといえます。