オーストラリアにおける事業の許認可に関する調査

日本企業がオーストラリアに進出する際には、自社がオーストラリアにおいて行なおうとしている事業について、オーストラリアで政府の許認可等が必要になるか否かを調査する必要があります。日本企業が自ら豪州で現地法人を立ち上げる場合はもちろんのこと、豪州の会社を買収する場合にも、きちんとリーガルデューディリジェンスを行なって、買収対象の会社が事業に必要な許認可を取得しているか否かを調査する必要があります。

この事業許認可に関する調査を行う上で便利なのが、Australian Business
Licence and Services Informationのウェブサイト
です。このウェブサイトの検索システムで画面の指示に従って必要な情報を打ち込んでいけば、事業に必要となる許認可について詳細かつ網羅的な情報を得ることができます。このABLSIのウェブサイトは無料ですし、実際にオーストラリアの法律事務所がM&A等のデューディリジェンスにおいて必要事業許認可の調査を行う際にもこのウェブサイトを利用しています。許認可の根拠法や所轄官庁、許認可の申請手続が記載されているウェブサイトのリンク等も記載されており便利です。

オーストラリアは連邦制をとっており、「連邦法による規制」と「州法による規制」の2種類があり、州法は州毎に内容が異なります。したがって、どの州で事業を行なっているかによって必要な許認可が異なる場合もあります。しかし、ABLSIのウェブサイトでは連邦法と州法の両方をカバーしており、連邦法において必要となる許認可と州法において必要となる許認可の両方の情報を得ることができます。

事業の許認可に関して、一般的に言って、日本よりもオーストラリアの方が規制が緩やかであるといえます。日本では当然に許認可が必要になる事業であるのに、オーストラリアでは許認可が必要にならないという事業は数多くあります。例えば、労働者派遣事業は日本では労働者の中間搾取を防ぐという観点から労働者派遣法によって規制されており、事業を行なうためには厚生労働省の許可が必要になりますが、オーストラリアでは特に規制されておらず、許認可は必要ではありません(ただし、下記の2018年2月7日付の追記を参照)。なお、オーストラリアでは労働者派遣はLabour Hireといいます。また、日本では、金銭の貸付を業として行う貸金業について、貸金業法に基づく登録が必要になりますが、オーストラリアでは貸付の相手方が消費者ではなく企業のみである場合には、特に許認可は必要となりません。但し、貸付の相手方が消費者である場合には、National Consumer Credit Protection Act 2009 (Cth)に基づくCredit Licenceが必要になります。

*(2018年2月7日付追記) 2017年に、クイーンズランド州と南オーストラリア州において労働者派遣事業を許認可制とする新しい法律が制定されたため、この2つの州では労働者派遣事業は許認可が必要な事業となりました。また、ヴィクトリア州でも同様の法律が制定される予定です。