Managed Investment Scheme(MIS)の概要(2)

前回の記事から引き続いてMISの概要について説明します。

Compliance PlanCompliance Committee

ASICに登録されたMIS(Registered MIS)は、MISが会社法をはじめとする法令及びConstitutionを遵守して運営されることを確保するために、Responsible Entityが採る措置を定めたCompliance
Planを作成する必要があります(会社法601HA条)。Registered MISのCompliance PlanASICに登録されるため、誰でも所定の金額を払えば、ASICの登記情報としてオンラインで入手することが可能です。

Registered MISは、そのResponsible
Entityの取締役の半分以上が社外取締役(external director)ではない場合、Compliance
Committeeの設置が必要になります(会社法601JA条)。Compliance
Committeeの設置が必要となる場合、Compliance Committeeの組織・運営に関する事項をCompliance
Planに記載する必要があります。

「社外(external)」といえるためには、(1)過去2年間において、当該Responsible Entityやその関連会社の従業員や役員ではなく、(2)過去2年間において、当該Responsible Entityやその関連会社と実質的な取引関係を有しておらず、(3)当該Responsible
Entityやその関連会社について重大な利害関係を有しておらず、(4)Responsible Entityやその関連会社に重大な利害関係を有している者の親戚ではないことが必要になります(会社法601JA(2))。

Compliance Committeeが設置される場合、そのCommitteeのメンバーは3名以上でなければならず、そのメンバーの過半数が上記の「社外(external)」の要件を満たしていなければなりません(会社法601JB条)。

Compliance Committeeは、Responsible
EntityCompliance Planに従ってMISを運営しているか否かを監督し、Responsible Entityに対して違反の有無を報告します。また、Responsible
EntityCompliance Committeeの報告事項に対して適切な措置を採らない場合には、ASICに対して報告を行ないます(会社法601JC条)。

Members’ Meeting(持分権者会議)

MISの定義(MISの定義については前回の記事を参照)にあるとおり、MISの出資者(MISの持分権者)はMISの日々の運営には関与しません。MISの日々の運営はResponsible
Entityに委ねられています。しかし、Responsible Entityの変更、Constitutionの変更、MISの解散(Constitutionに規定されている場合を除く)等の一定の重大な事項については、MISの持分権者の会議を開催し、その会議で決議を行なうことによって決定されます(会社法601FL条、601FM条、601GC条、601NB条)。MISの持分権者会議(Members’ Meeting)は会社の株主総会に相当するものといえます。MISの持分権者会議の手続等については、会社法のPart 2G.4252A条以下)に規定されています。

Product Disclosure DocumentPDS

有価証券(株式や債券又はこれらのオプション等)の発行・売出しについては原則として目論見書(Prospectus)という開示書類が必要になりますが(詳細についてはこちらのブログ記事をご参照ください)、Registered MISの持分(Unit
TrustUnit等)の発行・売出しについては原則としてProduct Disclosure
DocumentPDS)という開示書類が必要になります。PDSには、MISの内容、便益、リスク、費用等のMISの内容を理解する上で必要となる情報が説明されます。

会社法上、PDSの交付が必要になるのは、MISの持分の発行・売出しを行う相手方がRetail Clientである場合に限られます(会社法1012B条及び1012C条)。

Retail Clientとは、以下の(1)又は(2)に該当しない者をいいます。

(1)Wholesale Client(会社法761G条)

・ 500,000豪ドル超を投資する者

・ 大規模企業(製造業の場合には100人以上、それ以外の事業の場合には20人以上を雇用する企業)

・ 直近2年間の純資産が250万豪ドル以上又は総収入が25万豪ドル以上であると会計士の証明を受けた者

・ プロ投資家(Professional Investor)(AFSL保有者、上場会社、10百万豪ドル以上の資産を保有又は運用する者等)

(2)Sophisticated Investor(会社法761GA条)

発行・売出しを行う者がAFSL保有者であり、その過去の経験から相手方が発行・売出しの対象である金融商品(MISの持分)の内容を理解することができると合理的に判断でき、かつ相手方がPDS等の開示が行なわれないことについて書面で同意をする場合には、相手方はSophisticated
Investorとなる。

また、相手方がRetail Clientであっても、以下の(3)~(5)の場合にはPDSの交付は必要になりません。

(3)関係当事者(会社法1012D(9A)及び(9B)

発行・売出しの相手方が当該MISResponsible Entity又はその関連会社の経営に関与する者又はその親戚である場合

(4)オーストラリア国外にいる相手方に対して発行・売出しが行われる場合(会社法1011A条)

(5)小規模発行・売出し(会社法1012E条)

過去の経緯等から当該発行・売出しに関心があると考えられる者に対してのみオファーを行い、直近12ヶ月間において、合計2百万豪ドル以下の金額を合計20名以下の者から調達する場合

以上がMISの概要になります。