企業結合の届出(2)

以前のブログ記事で説明したとおり、豪州では、重要な市場における競争を実質的に制限する(substantially
lessening competition)効果を有する、又はそのおそれのある企業結合は、豪州の独占禁止法(Competition
and Consumer Act 2010 (Cth)50条等)によって禁止されています。

上記のとおり競争を実質的に制限する効果があるか否かが基準であり、企業結合によって買収者が対象会社の支配権を取得した場合(例えば、対象会社の株式の過半数を取得した場合)ではなくても、この基準を満たす場合があります。

例えば、買収者が対象会社の20%程度の株式を取得した場合であっても、買収者が対象会社の事業に影響を及ぼすことができる立場になったり、又は買収者と対象会社が戦略的提携関係に入ることによって、対象会社が関連市場において独立して事業を行っているとはいえないようになる場合には、企業結合によって競争を実質的に制限する効果が生じているか否かを検討する必要があります。

このような企業結合において競争を実質的に制限する効果があるか否かを検討する際には、買収者と対象会社の関連市場における地位(市場シェアなど)、買収者が関連市場における対象会社の事業に対して影響を及ぼすことができる能力、買収会社と対象会社の間の戦略的提携関係の内容等が考慮されます。

他方で、買収者が対象会社の20%程度の株式を取得した場合であっても、買収者にとって完全に受動的な投資であり、関連市場における対象会社の事業に影響を及ぼさない場合には、それ以上、競争を実質的に制限する効果が生じているか否かを検討する必要はないといえます。

企業結合の規制は買収者が対象会社の過半数の株式を取得した場合にのみ適用があると誤解している方がいるため、本記事で説明させていただきました。