Casual Employee(臨時従業員)に関する問題(1)

1.労働者の分類とCasual Employee(臨時従業員)

オーストラリアの労働法上、労働者のタイプは大雑把にいって以下のように分類することができます。

独立事業者(Independent Contractor

従業員(Employee

 

正社員(Permanent Employee

Full Time

Part Time

臨時従業員(Casual Employee

独立事業者」は、自らが独立した事業者として他者に対してサービスを提供する者であり、サービスの提供を受ける他社との間に雇用関係(Employment Relationship)は成立しません。したがって、基本的には従業員(Employee)であれば受けることができる労働法上の保護を受けることができません。

従業員」は、雇用者との雇用関係が成立しており、雇用者の指示に従って業務を行います。労働法上の保護を受けることができます。

「従業員」のうち業務や勤務時間が保証されており、一時的ではなく継続的に勤務することが想定されている従業員は「正社員(Permanent Employee)」と呼ばれます。

正社員」のうち1週間の法定労働時間の上限である週38時間勤務する従業員をFull-Timeの従業員といい、それ以下の時間勤務する従業員(例:5時間/日で週4日勤務する従業員)をPart-Timeの従業員といいます。

他方、「従業員」ではあるものの、臨時に雇用されたものであり、雇用期間や業務や勤務時間が保証されていない従業員を「臨時従業員(Casual Employee)」といいます(給料は働いた時間や日数に応じて時給・日給計算で支払われます)。臨時従業員は、雇用者が原則としていつでも雇用を終了させることができるため、雇用が不安定であるといえます。また、労働法上、年次有給休暇(Annual Leave)や病気休暇(Sick Leave)や整理解雇手当(Redundancy Pay)を受ける権利もありません(病気で仕事を休んだ場合、病気休暇が使えないため、その日の給料はもらえません)。これらの不利益の代償として、臨時従業員は「正社員(Permanent Employee)」の給料の25%増の給与を受けることができます(この25%の割増分はCasual Loadingと呼ばれます)。

2.臨時従業員(Casual Employee)の制度と利用実態の乖離

臨時従業員は、もともとは一時的な人手不足に対応するために利用されること(たとえば、収穫期の農作業、大規模イベントの手伝いなど)が予定されていたのですが、実際には継続的な業務のために長期間にわたって利用されることが一般化しています。雇用の実態からすれば、本来であれば正社員として雇用すべきところを、雇用が調整しやすいように(解雇がしやすいように)臨時従業員として雇用する、という事態が生じていました。オーストラリアには約250万人が臨時従業員として雇用されていますが、そのうち135万人が規則的なシフトで1年以上同じ雇用者の下で勤務をしている(正社員的な働き方をしている)というデータがあります。

日本でもサービス残業(法律上は残業代を請求できるはずだが実際には支払われることはない)など制度と実態が乖離しているケースは見られますが、オーストラリアにもこの臨時従業員のように制度と実態が乖離しているケースがあるといえます。

この臨時従業員の利用について、最近になってオーストラリアの裁判所が実態を制度に合わせるように求める判決を出したため、大きな問題が生じています(次の記事に続きます)。