履行拒否(Repudiation)による契約解除

以前に契約法に基づく契約解除には、(1)契約の根幹となる規定(Essential Term)の違反に基づく解除、(2)契約の根幹とならない規定(Non-Essential Term)の重大な違反に基づく解除、及び(3)相手方が契約の存在や拘束力を否定する行為(履行拒否 – Repudiation)を行った場合における解除、の3種類があると述べましたが、今回はこの3番目の履行拒否(Repudiation)に基づく解除について説明します。

契約違反・債務不履行(Breach of Contract)はまだ発生していないにもかかわらず、相手方が契約を履行する意思を有していないことや、契約を履行する能力を有していないことが明らかになった場合には、この履行拒否に該当し、契約を解除することができます。これは契約違反・債務不履行が未発生であっても、これから発生することが確実に予期される場合には、その予期される契約違反・債務不履行(Anticipatory Breach)に基づいて実際に契約違反・債務不履行が発生する前に契約を解除する権利を認めてしまおうという考えに基づいています。このような履行拒否(Repudiation)に基づく解除は日本法にはぴったり当てはまるものはないと思われます。

履行拒否は契約の解除という重大な効果を生じさせるものですから、履行拒否に該当するためには、契約の重要な規定(たとえば、契約の根幹となる規定)についての履行拒否であり、相手方の契約に基づく利益を失わせるようなものであることが必要となります。

履行拒否は、契約当事者の発言によって示される場合や契約当事者の行為によって示される場合があります。たとえば、契約当事者がはっきりと契約相手方に対して、今後契約上の義務を履行するつもりはないと述べれば、履行拒否となります。また、不動産の売買契約において、売主が売買実行日前に当該不動産を第三者に売却してしまった場合、売主の当該売却行為により履行拒否の意思が明確になりますので、履行拒否があったといえます。