資源・エネルギー法(探査・採掘に関する許可/環境規制)

オーストラリアの法律事務所では一般的で重要であるが、日本の法律事務所ではあまり見られない業務分野として、資源・エネルギー法(Energy & Resources Law)があります。鉱物(石炭、鉄鉱石、銅等)、石油・ガス等の資源・エネルギーを探査・採掘し、採掘した資源・エネルギーを精製・販売するのが基本的な資源・エネルギーのビジネスであり、資源・エネルギー法とは、このビジネスに関連して問題となる法律をいいます。

本稿では、資源・エネルギー分野で問題となる事項及びその概要について説明します。

1. 探査・採掘

 

オーストラリアでは私人による土地の所有が認められているといえますが(オーストラリアの不動産制度(1)を参照)、私人の土地の所有権は当該土地に存在する鉱物・エネルギー資源には及びません。オーストラリアの土地に存在する鉱物・エネルギー資源は、国家の管理する土地に存在するものであれ、私人の所有する土地に存在するものであれ、全て国家に帰属するものとされています。

 

(1)探査

 

鉱物・エネルギー資源を採掘するためには、まず土地の探査(Exploration)を行って資源が地下に存在するの調査しなければなりません。探査を行おうとする者は、政府機関に申請を行って許可(Exploration Licence等の名称で呼ばれます)を得る必要があります。この探査許可には、探査許可の期間、探査対象の土地の範囲、政府機関に支払う費用、探査の際に従うべき条件等が付されます。探査活動によって探査対象の土地に損害等の影響を及ぼす場合には、当該土地の所有者に対して補償を行う必要があります。探査許可は政府機関が管理する登記簿に登記され、誰でも登記情報を入手することができます。探査許可の譲渡、探査許可に対する担保権設定等には政府機関の承認が必要であり、当該譲渡、担保権設定等は登記されて登記簿に反映されます。政府機関は、適切な技術的、人的及び財務的リソースを有していないと判断される者に対する探査許可の譲渡は、承認しない場合があります。

 

(2)採掘

 

探査の結果、資源が存在することが確認できた場合、採掘(Mining/Production)の段階に移ります。採掘を行おうとする者は、政府機関に申請を行って許可(Mining Lease等の名称で呼ばれます)を得る必要があります。採掘許可についても探査許可と同じく許可期間、採掘対象土地の範囲、政府機関への費用、採掘の際に従うべき条件等が付され、また、採掘対象土地の所有者に対する補償も必要になります。登記簿に登記される内容等についても探査許可と同様です。採掘許可に基づいて資源の採掘を行った場合、採掘者は採掘許可を出した政府機関に対して採掘料(Royalty:採掘した資源の価値の数%等)を支払う必要があります。

 

上記の探査・採掘に関する法律・規制は主に州法が管轄する分野になります。探査・採掘の許可(これらの許可は一般にTenementと称されます)は、各州の関連政府部門が管理しており、たとえば、クイーンズランド州における探査・採掘の許可の情報は、こちらでオンラインで調査・閲覧することができます。

 

2. 環境規制

 

資源の大規模な採掘を行う場合、環境に大きな影響を及ぼすことが多いため、そのような採掘を行おうとする者は、環境規制当局に対して申請して許可(Environmental Protection LicenceEnvironmental Authority等の名称で呼ばれます)を得る必要があります。この環境許可を得るためには、採掘プロジェクトが環境に及ぼす影響を評価した書面を作成して提出したり、一般公衆に広く意見を求める手続を経たりする必要がある場合があります。この環境許可の取得には12年かかる場合もあり、採掘プロジェクトのスケジュールや実行可能性に大きな影響を与えます。環境許可には様々な条件が付されるのが通常であり、採掘者はこれらの条件を遵守しなければなりません。そのような条件の一つとして、採掘者は採掘完了後に採掘現場の環境を復旧(Rehabilitation)しなければならないというものがあり、この復旧義務を担保するために多額の保証金を環境規制当局に支払わなければならない場合もあります。

 

環境規制は、州法と連邦法の双方が管轄しており、州と連邦のそれぞれの環境許可を得なければなりません。但し、この環境許可に関する手続は現在簡素化されてきており、(州の手続に)一本化される傾向にあります。環境許可は、各州及び連邦の環境部門が管理しており、たとえば、クイーンズランド州における環境許可の情報は、こちらでオンラインで調査・閲覧することができます。